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クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団で聴く ベルリオーズ 幻想交響曲 1964年来日ライブ

クラシック音楽を聴き始めの頃から、何故か幻想交響曲には魅かれ続けています。表題音楽なので取っつきやすい、派手で華麗なオーケストレーションの2・4・5楽章、またコーダの賑やかさは中学生だった私を虜にしました。当時から賑やかな音楽が好きな傾向にあるのは間違いありません。ベートーヴェンの第9もそうですが、この曲も終曲部から好きになりました。悪魔的なチューバ、快活に鳴らされるトランペット、グランカッサ・ティンパニ炸裂でダイナミックですから。
クリュイタンス 幻想交響曲
忘れられぬクリュイタンス盤のLPジャケット。

私がこの曲を聴き始めた時には、アバド/シカゴSOが発売されたころで名録音の名演とされていました。アルバムデザインもかっこよく、廃盤になった時期は無いと思います。
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図書館でLPを借りて聴いたはずですが、なぜか印象があまり残っていない。アンサンブルなどは優れているものの、狂乱・乱痴気騒ぎ感が薄い。また発売当時から現在に至るまで屈指の名演とされるミュンシュ/パリ管弦楽団の録音も何故か手元にありません。確かに血気盛んな演奏でこの曲には相応しい。ただEMIのオフ気味の録音がどうも曲に合わない。

ズドンと腹に落ちたのが、クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団との最初で最後となった1964年来日公演のLPでした。このコンビのラヴェル演奏とは一味も二味も違うことに驚きました。長きに渡り語り草となっている名演ということで購入した記憶があります。このオーケストラ独特の華やかさと音色感への期待が若干裏切られた代わりに、ミュンシュを超えるような熱気を孕んだ演奏に度肝を抜かされました。
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ベルリオーズ 幻想交響曲
指揮:アンドレ・クリュイタンス
パリ音楽院管弦楽団
1964年 東京でのライブ録音

KING時代にもCD化されましたが長きに渡り廃盤状態の中、突如として現れたALTUSがリマスタリングして再CD化。LP時代の太い音ではなく、上下にレンジが広がり分解能も高いいい音になりました。第1楽章のパリ音楽院管弦楽団の独特な訛りのある響き、第2楽章での舞踏会の洒落たシャネルの香りのするワルツ、その興奮をしっとりと落ち着かせるあの鼻がかかったような木管楽器の音色が光り侘寂(わびさび)の効いた第3楽章、そこから急にエスプリを捨てなり振り構わずテンションを上げて演奏される第4楽章と第5楽章。

4楽章から第5楽章終曲部は、EMIにエスプリ満点のラヴェルを録音していたコンビと本当に同一なのかと信じられませんでした。ここまでグランカッサを大胆に鳴らしアッチェレランドをかけながら、最後にトランペットが「タタタ・タタタ・ター」と連続するところでそれに合わせティンパニも強打させ、雪崩を打って最後のシンバルとトゥッティで帳尻を合わす。聴衆のブラヴォーの嵐当然です。LPでも中古で見つけ再度所持。不思議とLPの方がグランカッサの音の出がよく、部屋が揺れる感覚がします。CDだと少し耳に痛い部分もLPだとそうは聴こえないのも不思議です。


アバドの演奏。今聴いてもスマート。

テンポは前のめりで、トゥッティは音が汚くなる限界での強奏。これは興奮します。パリ音楽院管弦楽団は各楽器にフランスの音が色濃く残っている楽団でした。一方アンサンブル的には他の一流楽団に及ばない、気乗りしない時には雑な演奏に終始するというアンニュイなところもありました。ただこの演奏はその逆でホットワインの如く香りと熱気をむんむんと放射しています。これを聴いて以来というもの、ミュンシュのライブ盤以外は全部優等生的というかクールに聞こえてしまうという弊害に悩まされています。スタジオ録音でこの演奏を超えるのは無理だろうと。

ALTUSはアンコール曲も同時に発掘してカップリング。一転して木管楽器の色気を静かに漂わせて酔わす「展覧会の絵」の古城、締めくくりのビゼーの「アルルの女」ファランドールでもまた度肝を抜かされる。

普通の演奏でもそれなりに興奮するこの曲、一流の演奏家たちがバタバタになりアンサンブルが崩壊寸前になりながら進むこの演奏は別次元。今の演奏レベルからすれば「下手くそ」の烙印を押される。これだけの爆演をしても、どぎつさ・厭らしさがでないのは当時のこのコンビならでは。演奏全体にどこか鼻にかけた感じがして、いい香りがどこかしらに感じる。

「幻想交響曲」に戻ると最新録音でなら、M・T・トーマスとサンフランシスコ交響楽団のCDでしょうか。

アンサンブルを破綻させない理性的・純音楽的な解釈でありながら、後半楽章に進むにつれ適度に興奮させてくれます。とにかく録音が非常によく、スタジオ録音でも十分に満足させてくれる。第4・5楽章のティンパニをよく録音が捉えています。ダイナミックレンジが広いためか第3楽章が終わったらボリューム操作が必要。

この曲は寝る前には相応しくない演奏ですが、何故か寝る前に手に取ることが多い演奏です。香りに魅かれるのでしょうか・・・

※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚

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