クラシック音楽レビュー

ポール・パレーの質実剛健なフランク 交響曲ニ短調

ポール パレー

1960年前後、アメリカのマーキュリーによるリビング・プレゼンスのレコードが、音楽愛好家のみならずオーディオ愛好家にも驚異をもたらしました。「You are there」と謳い、オンマイク気味ではあるが録音の情報量の多さと、広いダイナミックレンジを誇りました。ドラティ、アメリカ時代のクーベリック、フレデリック・フェネル、オーケストラもミネアポリスやデトロイトの交響楽団などによる演奏のため、DECCA・EMI・グラモフォンのアーティスト陣と比べれば弱い。そのためオリジナルレコードでも、過小評価されています。ドラティの本物の大砲入り「1812年」序曲は、多くの人の度肝を抜きました。
マーキュリーラベル
そのカタログの中にフランスの指揮者 ポール・パレーがいます。1986年生まれで、1979年まで活躍しました。ベルリン、ウィーンというヨーロッパ一流の楽団とは縁が薄く、録音もメジャーレーベルには残されていないため、最近のクラシック愛好家にはもう知られていない存在でしょう。マーキュリーには、当時の彼の主兵デトロイト交響楽団との録音が多く残されています。

1952年に音楽監督の地位に就いたパレーは、デトロイト交響楽団を一流楽団に鍛え上げ、その後のアンタル・ドラティ時代の黄金時代の礎を気づいたといっても過言ではないかと思います。彼の音楽作りはまさに質実剛健。早めのテンポで熱を込めた音でぐいぐい進む。ただその中に各楽器へのニュアンス指示と音色作りは精密に設計されています。

残された録音はマーキュリーのオン気味な録音と優秀とは言えアメリカ的なオーケストラの音色が故に、明朗快活さの方に耳が傾きがち。また作曲家によってアプローチをあまり変えないので、多くのCDを続けて聴くと思い入れ無しで一本調子に感じられてしまうのがもったいない。

そんなパレーとデトロイト交響楽団が残した名盤の一つにフランクの交響曲ニ短調があります。このコンビの名録音としてはイベール「寄港地」、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」とともに未だに名盤の誉れが高い1枚。
パレー フランク

セザール・フランク
交響曲ニ短調
指揮:ポール・パレー
デトロイト交響楽団
1959年録音

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ヴァイオリン・ソナタで有名なフランクの残した唯一の交響曲。彼の特徴である循環形式による傑作。しかし演奏会での演奏頻度は、「オルガン付き」に比べ盛り上がらないためか少ない。聴かせる演奏にするのも難しいからでしょう。この交響曲の魅力は店長の多彩さで魔法のように次から次に転調していく。フランクは弟子に「4小節も同じ調で作曲するな」というような指導をするほど転調魔だったそう。


この交響曲は、名盤としてフルトヴェングラーから始まりモントゥーやデュトワ、カラヤン、ジュリーニなど数多く存在しています。大きく分けるとドイツ的に厚く重厚に演奏するか、フランス的にカラフルな音色で転調をこの上なく生かすかの2パターン。私はどちらの名盤聴いてもあまり曲自体に愛着は持てなかった口です。

そこでパレーの録音。軽薄でもなく重たくもない。録音手法同様、曲の内容をストレートかつ明晰に明らかにしてくれます。転調が美しい部分でもそっけないくらいにテンポを動かさずに進みます。響きは明るいオーケストラの特性ゆえ金管が明快で響きも筋肉質。録音年が古いにも関わらず弦楽器の刻みも明確に聴きとれます。骨太の骨格に血の通った質のいい筋肉を纏わせたような演奏です。ほのかな厚みもある。


この演奏を初めて聴いた時、この曲の良さが初めて分かったような気がしました。これを聴いてからジュリーニやデュトワの演奏を聴くと、それぞれの良さもまた改めて理解できるようになる。曲の構成をパレーの演奏で理解できたからでしょう。長いレコード文化の中で、録音方式と演奏者の個性が相乗効果として現れる例はそれほど多くは無いと思いますが、この1枚は間違いなくその例外の1枚と言えます。


フランク 交響詩「プシュケ」から「プシュケとエロス」。私のフランクの一押し曲です。またジュリーニが愛撫するようにレガートで演奏する。
ジュリーニ フランク
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※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚

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