ルドルフ・バルシャイ(1924~2010)というロシアの指揮者がいます。エフゲニー・ムラヴィンスキーとともに、ショスタコーヴィッチの交響曲の普及に多大な貢献をした指揮者で、交響曲第14番は彼が初演を行っています。作曲者との親交も深く、ムラヴィンスキーとともにソヴィエトの恐怖政治時代と作曲者の思考を身をもって知る生き証人的存在です。

バルシャイはソヴィエト時代に国営企業のメロディアでモスクワ室内管弦楽団とともに録音を多く行っていたものの、録音の質が悪いこともあってCD時代になってからは忘れられています。国自体もショスタコーヴィッチの交響曲録音はロジェストヴェンスキーやムラヴィンスキーに割り振って力が入れられていたことも大きな要因かと思われます。日本には単身来日ばかりで読売日響によく客演していた印象があります。彼のリハーサルは非常に厳しく、思い描いている音が出ないと徹底的に絞りあげられていたそうです。
そんなこともあってか主要メジャー交響楽団のポストを得ることなく他界しましたが、2000年に入ってWDR交響楽団(ケルン放送響強楽団)と録音したショスタコーヴィッチ交響曲全集が突如発売され大きな注目を浴びました。ブリリアント・レーベルという廉価レーベルBOXからで、全15曲の全集でありながら3,000円を切る価格ということで飛ぶように売れたようです。しかも録音も演奏も優れている。私自身ムラヴィンスキー以外のショスタコーヴィチの交響曲をあまり聴く方ではなかったのですが、この全集によってよりショスタコーヴィチの音楽への理解が深まりました。同国そして同時代人の演奏は、やはり説得力が違う。
ショスタコーヴィチ 交響曲全集 全15曲
指揮:ルドルフ・バルシャイ
WDR交響楽団(旧 ケルン放送交響楽団)
1992~2000年録音

バルシャイ自身も若かりし頃と違い、角が取れて円熟味のある演奏を行っています。14番の初演のライブ録音を聴くと、ムラヴィンスキーもかくやと思われるほど鬼気迫った音楽作りをしています。首にナイフを突きつけられているようなヒリヒリ感が凄い。ただ録音が良くない。晩年に入ったWDR交響楽団との録音は、ドイツのオーケストラにショスタコーヴィチの音を徹底的に指導した形跡がしっかりと刻み込まれています。1番から15番に至るまで曖昧な音作りが全くない。この後ゲルギエフやネルソンスなどの交響曲全集録音がされたましたが、バルシャイの演奏を超えているとは思えません。
14番初演時の演奏。
特に優れているのは、第4番・7番・8番・10番・11番・15番あたりでしょうか。ショスタコーヴィチの交響曲はマーラー・ブルックナーに比べて取っつきにくいし理解しにくい。ただこう交響曲全集を聴くと、そこまでの難解さを感じません。これは非常に大きい利点です。ムラヴィンスキーの録音が残っているものに関しては、比べてしまうとオーケストラの技量含めて少々分が悪い。ただし録音も含めてと考えれば、後世に残るのはバルシャイの方ではないかと思います。レニングラードpoの低弦の分厚さと人間業とは思えないアンサンブルのすさまじさは忘れられませんが。バルシャイは元々ヴィオラ奏者だったので、弦楽器の扱い・バランスのとり方は非常に巧く、金管・木管楽器が目立ちがちなショスタコーヴィチの交響曲にあっても弦楽器の繊細さがあります。
忘れ去られるかと思った矢先、タワーレコード企画盤でSACD化されました。
タワーレコード → バルシャイ ショスタコーヴィチ交響曲全集SACD
売れていないのか一向にレビューがかかれる気配がありません。廉価だったから売れただけだったというには残念過ぎるCDです。デジタル録音のSACD化というのも「なんちゃってハイレゾ化か」と思われて損をしている。実際リマスタリングはデジタルを一旦アナログに戻して行い、リマスタリングされた音源をDSD化するので純粋にマスターからダイレクトでSACD化していない。ただアナログ録音のSACD化も似たようなものですし、ただハイビット化する位であれば優れたエンジニアがアナログでリマスタリングを行った方が良いと思います。
実際に聴いてみると、個々の音は粒立ちが良くなりホール感が自然に広がった感じがします。そのためショスタコーヴィッチ特有の管楽器のソロイスティックな部分が非常に表現豊かに聴こえるようになったり、壮絶なフォルティティシモもより音楽的に感じられれるようになったと思います。ピアニッシモで終わる4番・8番・15番の余韻も儚く美しい。CDではここまで感じられなかったと思わせます。タワーレコードのSACD化企画盤の中でも成功している方だと感じますが、如何せん価格が10,000円超えだとショスタコーヴィッチの音楽がよほど好きな人でないと手に取れないのかも。ゲルギエフだとBlu-rayで全集変えてしまいますから。それだけで人気が無いのは勿体ない逸品です。
youtubeでも人気が無さそうだ。知名度が無いので仕方がない。
最近は新譜のニュースを眺めているとマーラーばかり。ポスト・マーラーとかポスト・ブルックナーと言われて久しいショスタコーヴィッチ。録音はされるものの話題盤となることは非常に少ないし、コンサートでは井上道義やロシアの指揮者が取り上げるくらいではないでしょうか?マーラーやブルックナーと違い、聴いた後の充足感がプラス方向にならないから、現代のコンサート的には不向きでブームにはなりにくい音楽だと思います。インバルと都響のCDは一時期聴いたものですが、どうも本筋の演奏ではないような気がして徐々に手に取らなくなりました。
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