1980年代、まだまだリッカルド・ムーティとクラウディオ・アバドは若手指揮者でした。ともに1970年代から録音は活発で、多くの録音が残されています。ムーティはEMI、アバドはグラモフォン。まだカラヤン、ベーム、バーンスタインが最盛期は過ぎたが存在感は絶大で、そこと比べると厳しいという評価。ただ、その後はこの二人が担うだろうという雰囲気は強かった。

このラベルの印象が強い。
1990年代、巨匠は世を去り、アバドはベルリンpo、ムーティはミラノ・スカラ座をベースにウィーンpoと強固な関係を築きました。個人的にはアバドは1980年代と病からの復活後2000年代のルツェルン音楽祭、ムーティはフィラデルフィアとの1980年代~2000年代初頭までのウィーンpoとの活動が一番脂の乗り切った時期だったのではと思っています。
1980年代、日本ではどちらかというとアバドの方が評価されていたような気がします。私は1985年にフィラデルフィア管弦楽団と来日した際のコンサートをTVで見てすっかりムーティ派で今に至ります。棚にもムーティのCDはかなり残っています。アバドは数枚。1985年に来日した時のプログラムは今のムーティでは考えられないようなムソルグスキー「展覧会の絵」、マーラー「巨人」、そしてストラヴィンスキー「火の鳥」組曲等。テレビで見たのは「巨人」と「火の鳥」。ともに覇気に溢れオーケストラをグイグイ引っ張り、歌い鳴らす爽快なものでした。
そんな彼らのレコードが欲しくなり手にしたのが「展覧会の絵」と「火の鳥」組曲がカップリングされた1枚。録音は1978年でデジタル録音前であり、ムーティもフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督に就任するまででもありました。テレビの演奏よりもまだ統率が取れていない、少し響きもまだムーティ節にはなり切っていない。ただ前任のオーマンディ・トーンにムーティの斬れの良さが加わった佳演で未だによく聞きます。
ストラヴィンスキー
「火の鳥」組曲(1919年版)
(カップリング ムソルグスキー「展覧会の絵」)
指揮:リッカルド・ムーティ
フィラデルフィア管弦楽団
録音:1978年
AMAZON → ムーティ「展覧会の絵」「火の鳥」
序奏から潤いのある弦の響きがします。全体的に早めのテンポでダレるところがありません。その後、木管楽器の絡み合いが続きます。その音色はオーマンディ時代の音色でカラフルで多国籍的、その後のムーティのストイックな響きが感じられません。そのため「王女のためのロンド」はその弦楽器と木管楽器の絡み合いが美しい。滔々と美しい響きが耳を通り過ぎていきます。ロシア的な響きは皆無です。
ムーティの得意そうな「カスチェイの凶悪な踊り」になると、グイっと手綱を自分に引き寄せた感じで一気呵成にオケを爽快に鳴り響かせます。ここは来日公演に比べると厚みが無く表面的な感じで、金管楽器がスポーティでアメリカナイズされすぎているような気がします。
指揮姿も明確で力瘤が入っている。最後はお馴染み後ろ振り向きフィニッシュ。
その後の「子守歌」は再び弦楽器が美しい響きで咽ぶように歌い上げる。来日公演でも素晴らしかった終曲、美しいホルンから始まり早めのテンポ設定で進める。最後の手前ではオケを鳴らし切るためにテンポを一旦落とし合奏で鳴らし切る見得のきり方は素晴らしい。録音の加減もあり、少しフォルティティシモが力技っぽくなるのもまだ若手らしい。
ムーティとマーラーの組み合わせはイメージが無いかと。意外とこの「巨人」はいいです。録音も「巨人」のみ。
このころのムーティは早め一辺倒かと思いきや、「巨人」のコーダでもしっかりとテンポを落として歌いきる部分を作るなど、アバドよりも芝居気がありました。アバドも競うかのようにロンドン交響楽団とストラヴィンスキーの三大バレエの同時期に録音し、そちらは評価が高かった。今聴くとムーティの三大バレエの方が豪快で土俗的に感じられ、どちらかといえば面白く聴けるのはムーティの方です。残念ながら評価は今も昔も高くない。
私が「火の鳥」を見て聴いたのは、NHKのアーカイブ映像でストラヴィンスキー作曲者自身がN響に客演した時の「終曲」の映像。
ベートーヴェン、モーツァルトなどまだ古典派中心に聴いていた若かりし私には、面白く劇的な音楽だといたく感動しこの曲を全曲で聴きたいと思ったものでした。その後全曲をFMで聴いてなんか違う、1919年組曲を聴いてもあれなんか違うと思ったものです。そう、全曲はオーケストレーションが違い組曲ほど鳴りが良くない、またストラヴィンスキーがN響で振ったのは1945年版の組曲で終曲の最後をスタッカート気味に音を切って演奏していたからです。
なので、この「火の鳥」組曲の良さを初めて感じたのは、ムーティとフィラデルフィア管弦楽団の映像でした。その後、チョン・ミュンフンやデュトワなどの同曲演奏を聴いて素晴らしいとは思うものの、初期の耳への刷り込みは強いようで未だにムーティの演奏に惹かれてしまいます。今のムーティには感じられない若気のイタリー的な快演です。今のムーティよりも好きです。
※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚
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