クナッパーツブッシュのライブ録音の中で一番音質もよく、演奏も優れているのはこの1962年12月16日の演奏会の記録。このCDのおかげでR・シュトラウスの「死と変容」、そしてシューマンの交響曲第4番は他のCDに浮気することはありません。

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シューマン 交響曲第4番ニ短調
指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1962年のライブ録音
※カップリングはR・シュトラウスの「死と変容」。
これもカラヤンとは同次元で語ることはできない名演。
ずっと音の悪い(まだましな方でした)海賊版で聴いていましたが、ALTUS盤は当時の録音としては十分すぎるほどよい。フルトヴェングラーの演奏もよい歴史的名盤ですが、この抉りの深さを聴いてしまうと駄目です。当然アンサンブルはスタジオ録音のフルトヴェングラー盤が上で、このライブ録音は結構乱れがあります。かなり録音もデッドなので、それも目立つ。しかし深いチェロの抉りや深遠なる所から這い出てくるような第4楽章の開始部分は末恐ろしい。
昔、この日の演奏会記録はハイドンの第88番とともにKINGから発売されていましたが、このCDでは残念ながらカットされています。KING盤の音質はかなり劣ります。

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プログラムとしてはこの順番で演奏されていますが、このハイドンの録音だけは別の年の演奏をCDに入れて、すべてのプログラムを収めたかのようにしてます。ハイドンの88番はクナの十八番です。1958年の演奏っぽい。
しかしこれだけいい音で演奏記録が残っているのだから、ウィーン芸術週間のように映像もあるのではないかと勘ぐってしまいます。この曲は晩年のクナッパーツブッシュのお気に入りようで、複数の録音記録が残っています。基本的な解釈は変わっていませんが、このウィーン・フィルとの演奏が録音状態とオーケストラの音色の魅力もあり一番です。拍手が鳴り止まぬ中演奏を始めてしまうところは、さすがはクナです。しかしこの演奏、チェロとヴィオラ、そしてトロンボーンの音が素晴らしい。しかも録音が鮮明にそれを捉えてくれています。
全体を通してかなり遅いテンポで演奏していますが、全く遅いと思わせない深い呼吸は見事です。これだけの遅いテンポでも弛緩することがなく、各セクションがしっかりと歌いきっています。シューマンの交響曲はオーケストレーションが上手くなく、鳴りにくいといいますが、クナの演奏を聴くとそうは思えません。
第4楽章コーダでは、トロンボーンが咆哮しています。お待ちかねクナの足音一発から(テンポはそのままで、響きがぐっと深くなる)の一気に終曲。咆哮するトロンボーンもそうですが、低弦の地を這うような音。どうすればこんな音をオーケストラから出せるのか、不思議です。しかも上品なウィーン・フィルから。
最近のムーティの演奏。テンポは遅く第4楽章のコーダは似たような解釈ですが、印象がまるで違う。流れが悪く感じる。シューベルトのグレートのコーダも昔クナッパーツブッシュのように大きなテンポダウンを使ってました。意外とムーティはクナの音源を聴いているのかも。
ある本で日本のオーケストラ奏者がこのCDを酷評し、「双方にとって不名誉な録音」と書いていましたが、ウィーンpoがここまで指揮者のやりたい音楽にずれながらも必死に「音楽を仕上げる」ことは稀有じゃないでしょうか?同日に演奏された「死と変容」も他の指揮者とは次元が違います。最後の弦で歌われる変容のテーマのヴァイオリンの絶唱。アンサンブルが少しずれることが、逆に咽び泣くような響きとなります。最後の和音も天空から降りてきたような音。
シューマンの交響曲の中では地味で暗い曲ですが、そこを逆手にとって抉りに抉った演奏です。ちなみにこの演奏のおかげで、他のシューマンの交響曲(特に1番「春」)とかは苦手。このCdに収められている「死と変容」とシューマンの第4番はフルトヴェングラーも得意にしていた2曲です。この二人とこの2曲、何か共通惹かれるものがあったのでしょうか?
※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚
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