クラシック音楽レビュー

LP音源付 クナッパーツブッシュのブラームス 交響曲第4番 1953年ライブ

入手困難、不思議とyoutubeにも無い音源。クナッパーツブッシュの中でもずば抜けて豪放磊落な演奏で有名な1953年のケルン放送交響楽団とのブラームス 交響曲第4番。1952年のブレーメンpoとのライブ録音もあり、後発ながらそちらの方が入手はしやすい。しかし、演奏は圧倒的にケルンライブの方が上。

この演奏は音が悪いと言われ続けていますが、所有するLPで聴く限り、当時のライブ録音としてはまずまずだと思っています。カナダのCAVIRの音源で録音年は1957年と誤記されています。この演奏の音が悪いという印象は、恐らく正規で発売されていたKINGやオルフェオのCDのせいで、アナログ時代に苦労して見つけたセブンシーズの国内LPを最初に聴いた時には、「すげぇ・・」と脳裏に焼き付けられた演奏です。ORFEOからの正規盤は、ノイズを抑えて高域をカットしすぎたせいか全体的な印象が窮屈で平坦に感じられる。ということで、LPの板起こしをしてみました。ブログ上で聴けるようにMP3となります。
クナッパーツブッシュ ブラームス 第4
ブラームス 交響曲第4番ホ短調
指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ
ケルン放送交響楽団
1953年5月のライブ録音



私がCDで一番良い復刻と思うのはTHARAの限定盤の中の1枚。当然廃盤で入手難。ただし、他の同曲異盤はかなり音質が劣ります。特にシューマンはひどい。ただパルジファルは全曲録音された日と違う録音ということで貴重。
veniasレーベルのBOXにも入っていて期待していたのですが結果は残念。多分ORFEO音源と同一。ただ最後に拍手がついているのはvenias盤だけ。加工した形跡はないので多分放送テープからの復刻だとは思うのですが。

フルトヴェングラーの1947年の同曲の演奏もドラマティックな名演として有名。こちらもリマスタリングを繰り返されても演奏は最高ながら音がちっともよくならない、国内初版LPが一番ましというのは共通。クナッパーツブッシュのこのライブは、金管楽器とティンパニの音を良く捉えたドラマティック+デモーニッシュな名演です。「ここまでブラームスをガンガンに弾かすか・・・」という位にオーケストラを唸らせ歌わせて咆哮させています。ブラームスを聴くというより、完全にクナッパーツブッシュを聴く演奏にはなってしまいます。
クナッパーツブッシュ ブラームス A面
まずはA面の第1楽章と第2楽章。クナッパーツブッシュとしてはテンポが早めで変化も結構つけている珍しい演奏です。ただし全体としては腰が据わっているために遅く感じます。第1楽章の追い込みとトランペットのうるさくならない咽び叫ぶような強奏、第2楽章クライマックスでのぐっとテンポを落として音をちぎっては投げつけてくるような、岩のように固い音塊がまず聴きもの。


凄い。言葉に表すことができないし、ジュリーニ・カラヤン・ザンデルリンク、最近ではアバドやラトルなどが演奏する同じ曲とは思えない響きを同じ楽譜から構築しています。

クナッパーツブッシュとしても力こぶがかなり入った演奏。この1953年はバイロイト音楽祭と喧嘩して唯一戦後出演しなかった年で、この演奏日の前後で丁度「出ない!!!」と返答したそうで、それで気が立っていたのか鬱々とした想いをぶつけたかのような音塊。宇野節でいう「アッパーカットのような」第3楽章の最初の和音。このLPでは聴いてわかるように演奏前の聴衆の雰囲気が残ったところから録音されているのでより「うぅ・・」ときます。
THARA盤などのCDではその演奏前のノイズをカットしていきなり「ダッターラッタ・ラーター」と始まるので、弾く直前に全奏者が息を吸うためが感じられずアッパーカット感が薄れてしまう。今回板起こしをしてイヤホンで大音量で聴いてみて気づきました。たったこれだけのことで与える印象がかなり違うものです。しかしこの楽章のティンパニの地鳴りするかのような音の深さは何と言ったらいいか。

第4楽章は総決算で楽譜を抉りに抉りぬいた演奏。最後の方で少しアンサンブルは崩れますが何のその。余計に緊張感は高まり低弦は大きい音で低回し、ホルン・トランペットも疲れを知らぬかのように真っ直ぐに胸に刺さる音の連続。ティンパニもここぞここぞと自信を持って思い切り叩く。ヴァイオリンもこのままでは音が奴らにかき消されてしまうと弦を弓にぐっと力を入れ弾く。でも全体としてのバランスが整っている奇跡。この曲を聴いて唖然・呆然とすることはこの演奏以外では、フルトヴェングラー位。B面第3・4楽章です。

クナッパーツブッシュ カイルベルト
mp3でも1953年ライブとしては悪い音だとは思えない。この演奏はクナッパーツブッシュ信者には有名なものの。あまりリマスタリング再発が無い不思議な演奏です。1954年ウィーンpoとのベートーヴェン・プロとか1963年のブルックナー 第8番ライブも昔から「音が良かったらさぞかし・・・」と言われていましたが、この両ライブはここ数年でいい音源が出ました。


ORFEOで駄目だったのでもうオリジナルのテープは劣化しているのかもしれません。平林復刻もあったみたいですが未聴。今回THARA盤のCDも改めて悪くないなと思いました。(veniasは論外でした)
正直言えば分解能はTHARAに軍配が上がりますが、製音されているからかスピーカーから出てくる当時の雰囲気とか総体的な音像としての圧迫感は、板起こしの方が勝っています。難しいものです。
やはり凄い演奏で凄い指揮者だったなぁと何度聴いても感嘆しきりのLPです。

※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚

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