クラシック音楽レビュー

ベートーヴェン 第9のプレスティッシモを聴き比べる-1 コブラとフルトヴェングラー

私が数あるクラシック音楽の中で一番好きな「ここ」という部分は、ベートーヴェンの交響曲第9番の第4楽章最後の844小節からスタートするプレスティッシモの部分です。演奏効果もさることながら、交響曲の締めくくりとしてこれほど素晴らしい締め方は無い。匹敵しうるのは、ブルックナーやマーラーの交響曲位でしょうか?しかし、指揮者によってこうも違うかという程違う響き方や聴き終えた後の印象が違う。第9のCDが発売されるとまず気になるのは最終最後の921小節目からの締めくくり。ここが気に入らないとまず買わない。

844小節から851小節までが助走で852小節から本格的な終結部プレスティッシモに入ります。オーケストラほぼすべての楽器と合唱で最後の追い込みに入ります。その後いったん917小節から4小節4分の3拍子のマエストーソでテンポを落とし溜めた後、921小節から20小節は楽器だけで速度を上げた歓喜の主題を高らかに歌い上げながら終曲します。演奏時間は約1分30秒ほど。

比較的に普通な例としてサヴァリッシュのプレスティッシモ。

ただベートーヴェンがつけたテンポ指示は852小節からのプレスティッシモは2分音符=132と猛烈に遅く、917小節からのマエストーソで遅くなるはずが4分音符=60(二分音符だと=120)少し早くなり、921小節からはプレスティッシモに戻れということから2分音符=132と少し遅くなります。明らかにおかしいということで通常は4分音符=132位、マエストーソたっぷりテンポを落とし(4分音符=30位)、最後に元に戻す(4分音符=132位)という急→緩→急という感じで演奏されます。マエストーソでたっぷりテンポを落とすことで最後の締めがより早く感じ興奮させられます。

ただし、ベーレンライター版からプレティッシモが自筆スコア記載のプレスト(プレスティッシモよりは遅い)になったこと、楽譜に忠実にと標榜する古楽器演奏様式の影響があったことから、マエストーソでそこまでテンポを落とさない演奏も増えてきています。そうするとテンポ変化が無いため、921小節からもそこまで早く感じず盛り上がりに少し欠ける演奏になります。ブリュッヘン、ノリントン、ラトルなどはその代表です。古楽器派で最近でいいのはサヴァールの演奏でしょうか。

シリーズ化してみようと思っているため最初は最も遅く演奏されたものと最速の演奏でどれほど印象が違うのかを見てみたいと思います。間違いなく最遅の演奏はマクシミアンノ・コブラ/ヨーロッパ・フィルハーモニア・ブダペスト管の演奏でしょう。古典派時代の指揮法は現在と違って、タクトの一往復をもって一拍と定義していたなる「テンポ・ジェスト」という理論に則り、約2倍ほど遅いテンポで演奏しています。最近の第9演奏は故楽器演奏の影響もあり全体的に早めとなり60分前後位なのに対し、チェリビダッケやクレンペラーもびっくり1時間54分もかかって演奏しています。当然最後のプレスティッシモも遅く2分36秒(921小節~だと29秒)もかかってます。



全曲はyoutubeでも見れますし、CDも出ています。正直とてもついていけません。

オーケストラと合唱団など可哀そうに思えるほどです。ただ最後の921小節からの部分通常では聴きとることのできない音符がはっきり聞こえてきます。

921小節からはトランペットがメインで「ファ-ファ-ソ-ラ-|ラ-ソ-ファーファミ|ファ-ファ-ソ-ラ-|ラ-ソ-ファーファミ」と高らかに鳴らす下で、ヴァイオリンは「レファソララソファミ|ファファソララソファミ|ファファソララソファミ|ファファソララソファミ」倍速で同じ音を弾いています。他の楽器に隠れてまず聴こえてきません。コブラの演奏だと弦楽器がメインのようにはっきり聞こえてきます。その分歓喜の主題が通常2回のところ4回聴こえる形になります。良いのはそれくらいでこの演奏では全く興奮できません。。

逆に最速は録音が多く残っているヴィルヘルム・フルトヴェングラーの中でも1937年のイギリス ロンドンで行われたジョージ6世戴冠式で行われたベルリンpoとの演奏ではないかと個人的には思っています。録音は古いですが、異常な速さと興奮度は伝わってきます。全体で1分28秒(921小節~だと10秒。コブラの3分の1)最後は2分音符=480という猛烈なスピードで駆け抜けます。

実際に演奏したら・・・4分音符までしか弾ききれないと思います。特に先ほど説明したヴァイオリンは8分音符なので引き飛ばさないと到底無理ですし、他の楽器と合わせながらという芸当は当時のベルリンpoでも帳尻を合わせるので精いっぱいだと思います。実際、有名な1951年のバイロイトの第9では帳尻ですら合わせれていません。ただ実際の会場は感動的で興奮の坩堝と化すでしょうね。フルトヴェングラーの第9の締めくくりは常に早いです。有名な戦時中の映像も残されています。この時も速いですが、921小節~だと11秒かかっています。

両極端の演奏ですが、これぞクラシック音楽を聴く醍醐味・面白さだと感じます。この部分だけの音源を収集していますので、頃合いを見て紹介していければと思います。

※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚

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