クラシック音楽レビュー

ヴィリー・ボスコフスキーとウィーンpoのJ・シュトラウス録音

ボスコフスキー LP

毎年1月1日はウィーンでニュー・イヤー・コンサートが開催されています。20世紀から21世紀に移り変わる時期、カラヤンが振ったりカルロス・クライバーが振ったりと非常に話題を振りまいてくれていました。最近は・・・あまり話題にもなりません。寂しいものです。それだけスター指揮者と言われる人がいないということでしょう。

未だにニュー・イヤー・コンサートの名盤といえば、古くは創始者であるクレメンス・クラウスのモノラル録音、ライブでいえば1989年と1992年のカルロス・クライバーのCDというのは21世紀に入っても変わっていない。21世紀に話題になったのは、日本では小澤征爾のCDになるのでしょうが、その演奏の本質的な評価は今の状況を見れば明らかで生硬なその演奏は本場ものではない。

私個人的に未だに愛聴しているのは、C・クラウスの急逝後にニュー・イヤー・コンサートを引き継いだウィーンpoの名コンサートマスター ヴィリー・ボスコフスキーが指揮した録音集。ニュー・イヤーを引退した後、ヨハン・シュトラウス管弦楽団と録音もしていますが、やはりDECCAがウィーンpoと録音したものには敵わない。まだ二拍目を早めにとるウィーン独特の三拍子とローカルな音色を残していたオーケストラの魅力は抗しがたいものがあります。

ボスコフスキー&ウィーンpo J・シュトラウスのワルツとポルカ集

ボスコフスキー シュトラウス
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ボスコフスキーの指揮は特段目を引くようなことはしていないものの、伝統の音楽とオーケストラをそこまで邪魔せずに響かせています。これと比べるとクライバーの演奏は、素晴らしい音楽なのは間違いないが、クライバー流にウィーンの味付けが施されているJ・シュトラウスであり、ボスコフスキーのようなウィーン情緒ベースとはやはり違うと感じてしまいます。

美しき青きドナウや皇帝円舞曲など超有名曲よりも、「シャンペン・ポルカ」「ウィーン気質」などの方が彼らの良さが味わえます。まだ「おらが街の音楽」といった風情が味わえます。

1950年代~1970年代後半までボスコフスキーは、ニュー・イヤー・コンサートを連続して指揮を執りました。一コンサートマスターが代表して演奏する形から、徐々に指揮者としての自我が芽生えていったことが録音を聴くとわかります。しかしながらその魅力は反比例するかのように失われていったような気がします。オーケストラの音色がユニバーサル化していったこともその要因の一つでしょう。

ボスコフスキーの評価は「クラウスに比べ都会的で洗練されたシュトラウス演奏」と言われますが、今聴くとそうか?と思います。確かに徐々にウィーン訛りは薄れていくものの、今のウィーンpoの音と比べれば十分田舎臭い。確かにクラウス時代の「おらが村」の音楽演奏から、「われらが街」の演奏に変わった。いまやその面影すらほとんど感じることができない。これらのCDからはウィーンpoの香気がまだ十分漂っている。


ボスコフスキーの指揮は、クラウスの急逝により急遽受け継いだ初期には「俺たちの音楽は俺らで自由に愉しくやろうぜ」といったあくまでコンサートマスターの業務の傍ら指揮もするといった趣。自由で雑さはあるものの、楽しく演奏しているのが感じられる。時代が経つにつれボスコフスキーが偉くなりすぎ、オーケストラの楽しそうな雰囲気が薄まっていく、加えてグローバリゼーションの波に飲み込まれていきオーケストラの訛り・固有の音色も薄れ、このコンビならではという演奏ではなくなっていった。徐々にマンネリ化していき、結果人気も下降線を描き始める。世界中継するにはボスコフスキーでは物足りない。

そもそもニュー・イヤーコンサートは、ウィーンの街のお祭りであり、全世界が同時中継するようなものではなかった。地元の聴衆に聴かせるだけの音楽を演奏するのと、全世界に向かって演奏するのでは当然姿勢が変わってしまいます。昔はお酒も入って気楽に演奏していたものが、生中継で楽しめるようになったとはいえ、徐々に肩肘張った演奏会に変わってしまったのは残念なものです。
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ボスコフスキーの指揮したニュー・イヤー・コンサートの映像も残されていますが、内輪で愉しんでいる光景が垣間見れます。いろんなものに手間暇がかかっていていい時代だなと思ってしまいます。演奏の質は確かに今の方が上です。ただ失われたものは大きいと感じます。


シュトラウス時代のスタイルに倣って、ヴァイオリン片手に時に一緒に演奏する姿は、彼の代名詞でした。ボスコフスキーのボウイングは本当に美しいです。

2026年、活躍する若手指揮者の一人 セガンが指揮していました。悪くなさそうな演奏でしたが、チャンネルを変えてしまいました。別にウィーンpoでなくてもいいような気がして。ムーティが指揮しても流れが悪い演奏になってしまいましたし(ちなみに2000年前後に彼が指揮した演奏は大好きです)、今後誰が指揮したら聴いてみたいだろう?と思ってしまう年始でした。そんなことを想う中、ボスコフスキーの残したcDをイヤホンで聴きながら寒空の下散歩したのは幸せなひと時でした。そんなCDが入手難になりつつあるのは悲しいものです。

※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚

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