クラシック音楽レビュー

バーンスタインとウィーンpoによるマーラー「大地の歌」

バーンスタイン 大地の歌

今では考えられないことですが、20世紀はレコード会社とアーティストは専属契約があって、専属契約中は他のレーベルへの録音は許されていませんでした。例えばフルトヴェングラーはEMI、カラヤンはEMI→ドイツ・グラモフォン、ベームはDECCA→ドイツ・グラモフォン。ソリストやオーケストラも同様。そのルールをかいくぐるための覆面オーケストラ(別の団体を名乗る)なんてこともありました。そのため、今では聴いたこともないようなオーケストラ名が昔のレコードにはあります。

1960年当時、名指揮者レナード・バーンスタインはアメリカCBSの看板指揮者、ウィーン・フィルはDECCA専属。バーンスタインのヨーロッパ進出が始まった1960年代中盤、DECCAとCBSソニーは互いの専属を出し合い交換でレコードを作成しました。当時としては大きな驚きを持って迎えられました。専属レコード会社が違うと、実演の機会はあったとしてもまずその組み合わせのレコードは制作されないだろうと思われていたからです。全盛期のZARD(B-Gram)がエイベックスからCDを出すようなものです。そんな稼ぎ頭を貸すわけがない。そのため3枚こっちで作るから、そっちもうちの所属使って3枚作っていいよと交換条件で貸し出すわけです。バーンスタインとウィーンpoのマーラー「大地の歌」の録音はその中の1枚です。
バーンスタイン 大地の歌
最近のCDジャケットは演奏者の写真ばかり。中国を感じさせる曲にフィーチャーしたLP時代のいいジャケットデザイン。

マーラー 交響曲「大地の歌」
テノール:ジェームズ・キング
バリトン:D・F・ディースカウ
指揮:レナード・バーンスタイン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1966年 ウィーンでのスタジオ録音
AMAZON→ バーンスタイン 大地の歌

ご存じのようにバーンスタインは、1960年代に1回目のマーラー交響曲全集をニューヨーク・フィルハーモニックとお録音していました。ただそこには「大地の歌」は含まれていません。この録音を行ったからという理由もあるからかもしれませんし、そもそも「大地の歌」を交響曲とみなさず1-9盤までで全集という場合もあります。その後CBSソニーにはイスラエルpoと録音をしましたが、だいぶ後の話でニューヨークとの交響曲全集のCD-BOXには含まれないのが一般的です。

この録音が驚きを持って迎えられたのはDECCAの鮮烈な録音もさることながら、通常アルトが歌う偶数楽章の歌唱をバリトンが歌っている点。マーラーの指定はどちらかなので間違ってはいません。しかも名バリトンであるディートリヒ・フィッシャー=ディースカウが歌っています。かなり録音されている「大地の歌」でもバリトンが担当しているCDは数少ない、最近ではマイケル・ティルソン・トーマスが、トマス・ハンプソンを起用しているくらいではないでしょうか。

第1楽章からバーンスタインの熱気に煽られて、オーケストラ全体がハイ上がりのトーンです。トランペットもジャジーな感じ。当時のウィーンではまだまだマーラーの音楽は人気が定着しておらず演奏に慣れていない時期でした。バーンスタインも、まだウィーンと蜜月な関係になる前。勢いだけになるかと思いきや、ウィーン・フィルも艶(あで)で対抗しているのが面白いところ。チェロなど低音楽器もしっかりと美しく収録されているし、所々ウィーン訛りもしっかり刻印されています。第1楽章最後の音のリアルさは最新録音よりも迫力とキレがあります。また1952年にワルターと録音した同じオーケストラとはちょっと思えない音の方向性の違いが感じられます。
大地の歌 レコード
初期のDECCAの良さが残る時代の品です。

キングのテノールは非常に伸びやかで好感が持てる声。ちょっと真っすぐすぎるきらいはあるものの、美声です。やはり評価が分かれるのは、ディースカウの方でしょうか。ただでさえアルト版に慣れた耳には違和感がありますし、また巧すぎる。でもアルト版より歌詞が明確に聞こえます。第4楽章中間部の早いパッセージのところは、唖然とするほど早口ですが明確。それで表情もつけて歌っているのは凄い。

今でも名盤とされているワルター/ウィーン・フィルでのフェリアーの正規録音より私は好きです。しかしさすがのディースカウも第6楽章は、ウィーン・フィルの美感に押され気味なものの最後の詠嘆は流石。初期LPでもこの録音を所持しており、時折聴きます。ノイズは多いものの、当時の空気感さえ詰まっているかのような録音の良さと最終楽章の極楽浄土の響きはCDでは感じられないものです。


バーンスタインはイスラエルpoと再録音をしますが、この盤は超えられなかった。アルト(クリスタ・ルートヴィッヒ)に宗旨替えしてます。バリトン盤にしたのは契約の加減もあったのでしょうか?でもディースカウは、当時EMIからグラモフォン専属ではなかったのでは?歌手はオペラなどの縛りは強かった一方、それ以外のジャンルでは専属契約には甘かったのかもしれません。

最近クラシックCDの新譜はマーラーの交響曲ばかり。にもかかわらず、20世紀に制作された定番マーラー録音を塗り替えられていないような気がします。。このCDを聴くと、お金と時間をたっぷりかけることができたステレオ・レコード時代爛熟期を感じることができる。その熱気が演奏と録音に注ぎ込まれていることも含めて、語りるがれる名盤だと思います。未だに「大地の歌」を聴きたいとき、ベルティーニとケルン放送交響楽団の東京ライブのCDかこのCDを手に取ります。

※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。
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