クラシック音楽レビュー

精緻の極み ドホナーニのドヴォルザーク「スラブ舞曲集」

🎧 圧倒的な精度と透明感。

昨年逝去されたクリストフ・フォン・ドホナーニ。彼の全盛期はやはりクリーブランド管弦楽団の時代だったかと思います。端正・精緻過ぎて面白くないとも言われていますがやはり一級品の演奏だったと今では思います。ただベートーヴェン・ブラームスとかはやはり薄味。今でも評判が高いのはドヴォルザークの交響曲8・9番。ただ私は「スラブ舞曲集」を推します。まさに“究極のモダン・ドヴォルザーク”。

ドヴォルザークの《スラブ舞曲集》は、民族色豊かなリズムと温かい旋律が魅力の名曲集ですが、民族性の欠片も感じられないもののドホナーニとクリーブランド管弦楽団(Decca)のCDは、世界的にも評価の高い決定盤のひとつです。
録音は1989年、クリーブランドのメイソニック・オーディトリアムにて収録。Decca黄金期のエンジニア陣による極めてクリアで分離の良いサウンドが特徴で、録音の方向性をオーケストラの精密さが完璧に融合しています。

ドボルザーク 「スラブ舞曲集」(全16曲)
指揮:クリストフ・フォン・ドホナーニ
クリーブランド管弦楽団
1989年 スタジオ録音

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なんといっても当時のクリーブランド管弦楽団の圧倒的精度。アンサンブルの精密さは当時の世界トップクラス。特にスラブ舞曲に不可欠な細かいリズムの切れ味が抜群で、速い曲でも音が濁らず、すべてのパートがクリアに聴こえます。このコンビの特徴がよく表出されてます。全体的な特徴としては
・弦楽器:しなやかで透明感のある音色
・木管:柔らかく歌心に満ちたフレージング
・金管:輝かしいが決してうるさくない
・打楽器:リズムの推進力が強く、躍動感を支える
まさに「アメリカの精密機械」と呼ばれた時代のクリーブランドの真骨頂。

そしてそれを生かすドホナーニの知的で構築的な指揮。ドホナーニはいつも通り感情を煽らず、音楽の構造を明晰に描きだす。そのため、スラブ舞曲の民族色にはかけますが、洗練された都会的な響きが全曲に漂います。速い曲はキレがあり、推進力が強い、遅い曲は深い歌心と陰影がある。全体として品格のあるドヴォルザークで、民族舞曲でありながら、クラシック音楽としての完成度が非常に高い演奏です。


またDecca録音の極めて優秀で1989年録音とは思えないほどのクリアさ。スタジオ録音でしっかりと時間をかけて制作できた時代のよいところです。まず楽器の分離が良く、ホールの残響も自然。低音の厚みがしっかりあり、高音は伸びやかで透明。ドホナーニの音楽的志向にぴったりとはまっています。特に Op.46-1(第1曲) の冒頭の息を吸い込むような開始前の空気感から出だしの弦の軽やかさ、Op.72-2(第10曲) の深い陰影が印象に残ります。

印象に強く残ったのは
● Op.46-1(第1曲) 軽快なリズムと透明感のある弦と精度の高さ。
● Op.46-8(第8曲) 金管の輝きが美しい。
● Op.72-2(第10曲) 深い哀愁と静かな情熱。
どの曲もドホナーニの抑制された表現が光ります。グラモフォン誌で「どんな半端な演奏でも魅力的な曲だが、ドホナーニの演奏はその中でも“はるかに上質”」と評されていました。


精密で透明感のあるアンサンブル、知的で構築的なドホナーニの指揮、Decca黄金期の好録音三拍子揃っており、洗練された絶妙なバランスを聴くことができるディスクです。本場ものノイマンやクーベリックなどで慣れた耳には非常に新鮮な驚きを与えてくれた1枚です。どちらかといえばクラシック初心者に、また録音マニアにも強くおすすめできる一枚です。

※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚

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