フランスの名指揮者で熱血漢 シャルル・ミュンシュ(1981-1968)。長い指揮棒を一閃、オーケストラを狂気に陥れる演奏は彼の得意技。彼の得意曲といえばドビュッシーの「海」とベルリオーズ「幻想交響曲」で、正規録音のほかに数多くのライブ録音が残されています。日本フィルに単独来日した折も演奏曲目に含めており、映像としても残っています。
その中で一際興奮の坩堝と化しているのが、1967年のパリ管弦楽団のお披露目演奏会のライブ録音。クリュイタンスの元で名録音を残したパリ音楽院管弦楽団が改組してパリ管弦楽団となった際のライブです。私としてはミュンシュの演奏は好みではなく、棚に彼のCDはこの1枚しかありません。ただこのCDに関しては、前任のクリュイタンスとの日本ライブと並び棚から動くことのない1枚です。

・ベルリオーズ 幻想交響曲
・ドビュッシー 交響詩「海」
指揮:シャルル・ミュンシュ
パリ管弦楽団
1967年 11月14日ライブ
AMAZON ⇒ ミュンシュ/パリ管 お披露目ライブ
「海」から恐ろしいほどまでのピリピリした緊張感。ヒヤリとした「海」。録音がオンマイクで超デットのためそれがより伝わってきます。人によってはこの残響が少ない録音は苦手かもしれません。残響は少ないですが、臨場感とその場に居合わせている感じは生々しい。ミュンシュの横にいる気持ちになります。我が家のメインスピーカー ONKYO D-509Eだとミュンシュの踏み鳴らす足音・息遣いが聴こえ、そしてオーケストラを叱咤激励するミュンシュの声もいまここのように感じさせてくれます。
初めから最後まで緊張感が途切れない。「波の戯れ」においてはEMI録音ではぼんやりとしか感じられなかったパリ音楽院管弦楽時代の木管(木管奏者は残ったメンバーが多い)と、洒落っ気のある弦楽器の響きの美しさが近接マイクで感じられます。「むせ返るような」という言葉がぴったり。
ボストン録音。
「風と海の対話」ではミュンシュが興乗り腕をぶん回しているのが想像できます。アッチェレランドに食らいつく最後のシンバルとティンパニの連打は、ミュンシュの声とともに圧巻の出来。この演奏会はパリ音楽院管弦楽団を解体し国を挙げ、ベルリンpoに肩を並べるオーケストラをという目的でパリ管弦楽団と改組した後のお披露目演奏会。パリ音楽院管弦楽団のメンバーの3分の2は入れ替わりローカルな音色はかなり薄れてしまいましたが、精緻さは増したように思います。なにより当楽団の有名だったやる気のある時と無い時の差が無くなったのは何より。
ただその後、ミュンシュが2年で亡くなってしまい、その後の指揮者選定は失敗続きでとてもベルリンpoなどと肩を並べるオーケストラにはなりませんでした。なぜかクラッシャー的な指揮者ばかりを選ぶ。バスティーユの時と言い、何故かパリ音楽界は政治が絡む。
幻想交響曲はクリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団の来日ライブと聴き比べると、両方共に熱がこもった演奏であるものの若干趣が違います。クリュイタンス盤は後半になるにつれボルテージが上がっていきますが、ミュンシュ盤は最初からフルスロットルで終楽章でさらにアクセルを踏む。
随分大人しいミュンシュの映像。
なのでクリュイタンス盤は第2楽章はエレガントで瀟洒な味わいがありますが、ミュンシュだとすでに力こぶが入って瀟洒な部分が無く根源的な迫力で押してくる。第3楽章ですらうっとり感よりも、常に前のめりでぴりついた感じがする。ただ第2楽章も第3楽章もそれゆえに歌うところが殊更印象的で美しく聴こえる。
第4楽章、第5楽章はいつものミュンシュながら血が煮えたぎるような演奏。クリュイタンスとの演奏はセクションごとで徐々に熱を帯び、冷静に加速していくクリュイタンスの棒に必死についていっている。一方ミュンシュとの演奏では奏者一人一人が指揮棒に応えていこうとする気迫と推進力があります。そのため微妙に聴後の印象が違う。
クリュイタンスの演奏には最後までいい意味でパリ音楽院管弦楽団の田舎臭さのある興奮・踏み外しでオケの色が強く残る。やる気無いオケのやる気スイッチが入る過程が愉しい。ミュンシュの方にはそれが無い。それはお披露目の場という緊張感(当然最初からやる気漲る)に加え昔の音色が減ったのとあくまでミュンシュの音楽だからでしょう。第4・5楽章でのミュンシュの吠える声。最後の和音はスタジオ録音と違って、かなり引き延ばしています。
このCDは何時も聴こうとは思いませんが、一旦CDトレーに載せると数日居座ります。しかしほぼ同じオーケストラにもかかわらず、数年でなぜこうも音が変わるのでしょう。そこがクラシック音楽演奏の面白さだと本当に思います。時と場所と人を得るとかくも感銘度や感動の質が変わる。この両盤に比べると、その後に発売された幻想交響曲のCDの生ぬるさはいかんともしがたい。
下記の正規スタジオ録音と言えども。AMAZON → ミュンシュ 幻想交響曲 スタジオ録音

どうぞクリュイタンスのライブと聴き比べを。
【過去記事】クリュイタンスとパリ音楽院o 「幻想交響曲」 1964年来日ライブ
※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚
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