往年のN響ファンならサヴァリッシュ、スウィトナーやマタチッチと並んでよく知られて存在であろうホルスト・シュタイン(1928-2008)。CDとして一番よく聴かれているのはグルダとウィーンpoで録音したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集でしょうか。それ以外では実力に比して録音が少なく、あとはウィーンpoと録音したブルックナー交響曲(但し地味なナンバー)、もしくはN響とのワーグナー録音と幾ばくかのライブ録音しか残されていない。

お世辞にもスタイリッシュな風貌でも指揮姿でもなく、音楽も質実剛健でカペルマイスター的で「おっ」と思わせるところもないため、玄人筋には受けがいいが人気はパッとしなかった。しかしウィーンpoとのワーグナーのCDでも聴きとれるように、オーケストラを巧みにコントロールし自分の音と音楽をしっかり持っていた指揮者でした。
今聴いても古臭いという感じがしない。リハーサルはかなり厳しかったそうで、相手がウィーンpoでも容赦なかったとのこと。でもウィーン国立歌劇場でも重宝されていましたし、1970年代のバイロイト音楽祭を支えたのもシュタインでした。ウィーンでもN響でも後年になって彼を評価する楽団員は多い。
シュタインにとってワーグナーは中心となる音楽だったにも関わらず残された録音が少ない。バイロイトでの記録はDVDで「パルジファル」と「マイスタージンガー」が残されていますが、70年代といえばブーレーズと演出家シェローの「指輪」ということでほとんど知られていない。70年代のバイロイトは50年代のクナッパーツブッシュ、60年代のベームの後で影がどうしても薄い。しかも演出の方に注目が集まりだし、指揮者の方はどんどん影が薄くなっていった時代でもありました。
そんな中で数少ない演奏記録の中で録音とオーケストラが揃っているのが、1987年のベルリン放送交響楽団(現在のベルリン・ドイツ交響楽団)とのライブ録音。しかも演奏曲目がバイロイトでの記録が残っていない神々の黄昏からの主要曲がたっぷり取り上げられている。

ホルスト・シュタイン ワーグナー・コンサート
ワーグナー
1. ジークフリート牧歌 ※これのみ1974年
2. 舞台神聖祭典劇 「パルジファル」からの7つの交響的断章
楽劇 「神々の黄昏」より
3. ジークフリートのラインへの旅
4. ジークフリートの葬送行進曲
5. ブリュンヒルデの自己犠牲 ~ 終曲
ソプラノ:ジャニーヌ・アルトマイヤー
ベルリン放送交響楽団
AMAZON → ホルスト・シュタイン ワーグナーコンサート
ホルスト・シュタインにとっては比較的後期の録音。2008年没ですが、体調の問題により90年代にはほとんど指揮台に上がることは無かった。N響とのコンサート映像を結構見たはずですが、記憶が全くない。その時には分からなかったのでしょう。燃え盛るバームのような凝縮したワーグナーではなく、がっちりとした骨格がありクナッパーツブッシュ方向の響きを持ったいわゆる伝統的なワーグナーで安心して聴くことができます。これを聴くとティーレマンのはまだまだなのかなぁと思ってしまう。
ジークフリート牧歌は21分を超えるゆったりとした演奏でありながら弛緩するところが無く、オーケストラの音も87年の時よりも良くも悪くもドイツ・ローカルな音がするので飽きることなく深く心に染みいる。パルジファルでは前奏曲と聖金曜日の音楽だけでなく、場面転換の音楽も含めて編まれた7つの交響的断章となっており、祭典劇全体を知り尽くした指揮者ならではの音楽づくりで、不思議とバイロイト的な響きを感じさせる秀演。
youtubeというのは本当に素晴らしい。1974年のバイロイトでの神々の黄昏。
神々の黄昏の抜粋では少しオーケストラの集中力が切れるところがあるようで、若干鳴りが悪く感じる部分がある。アルトマイヤーのソプラノも少し高音で張り上げる様な歌い方で耳につく。ホルスト・シュタインが歌のある所ではしっかりとオーケストラの音を絞るので余計に気になってしまう。しかしそんな配慮がしっかりとされていることにも感心します。
特段これといったことをしているわけではないのにワーグナーを聴いた感がしっかりと残る優れた演奏。ライトモチーフの歌わせ方、かき消されそうな木管のモチーフをさりげなく聴こえるようにコントロールしているのがよく聴くとわかる。そういうところがワーグナー演奏にとっては大事なのでしょう。
歳をとったからか昔はマタチッチ、マタチッチと思っていましたが、今は逆に当時なんで重宝されるのだろうと思っていたホルスト・シュタインやスウィトナー、ブロムシュテット、はたまたライトナーのほうが今聴いても感銘を受ける。聴力は衰えてきているはずですが、逆に聴こえるようになった音もあるのかもしれないと思うCDでした。バンベルク交響楽団とのCDなどもっと遺されていないのでしょうか・・・
※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚
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