プッチーニの歌劇「ラ・ボエーム」が超名曲であることは周知の通り。オペラの入門曲としても打って付けの曲。同じプッチーニの「蝶々夫人」の何十倍か優れた名曲だと思います。当然初演を務めたトスカニーニ盤をはじめ数多く録音されていますが、今カタログに残っていて入手し易い「ラ・ボエーム」はカラヤン盤位でしょうか?あとはマリア・カラスのCDか、レヴァイン/メトロポリタンのDVD位。こんな名曲なのに信じられない・・・

マフィアに見えますが、往年のイタリア・オペラの神様とも呼ばれた名匠 トゥリオ・セラフィン(1878-1968)。マリア・カラスを見出した指揮者としても有名で、ほとんどの指揮者を見下していた当時の一流歌手たちも一目置く存在でした。そんなセラフィンが遺したステレオ黎明期の「ラ・ボエーム」の名盤も長らく入手難の状態。私は「ラ・ボエーム」を聴く時は、このセラフィン盤かC・クライバーの海賊盤(ミラノ・スカラ座との来日公演ステレオライブ)位。後者もレア。カラヤン盤も聴いた記憶はありますが、このセラフィン盤の素晴らしさには敵わずすぐに棚から消えました。なんといってもこの歌手の贅沢さ・・・みんな主役級です。
プッチーニ 歌劇「ラ・ボエーム」全曲
レナータ・テバルディ(ミミ)
カルロ・ベルゴンツィ(ロドルフォ)
ジャンナ・ダンジェロ(ムゼッタ)
エットーレ・バスティアニーニ(マルチェッロ)
レナート・チェザーリ(ショナール)
チェーザレ・シエピ(コッリーネ)
フェルナンド・コレナ(ブノワ/アルチンドロ)
ピエロ・デ・パルマ(パルピニョール)
指揮:トゥリオ・セラフィン
ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団&合唱団
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曲についてはもう語る必要もない位、最初のトゥッティから心躍らされ、その後も愉しいメロディと愛しい旋律に溢れている。筋も明快で男女の出会いと別れ、再会の喜びも束の間永遠の別れとなる幕切れ。全4幕が抒情的かつ交響曲のような構成(第2幕はスケルツォ、第3幕はさしずめアダージョ)でしっかりとしており、魅力的なアリア満載。
それをセラフィンが素材の良さをそのままにシンフォニックに料理している。そんなに名オーケストラではないローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団から、なんと巧いオーケストラだろうと溜息が出る位の音を引き出す魔術。そして歌を一時も邪魔することなく、歌手までも見事に力でねじ伏せることなく掌握する能力。これ程の名歌手たちの個性を十分生かしながらまとめ上げる手腕は今のムーティでも厳しい。
クライバーの来日公演。ゼッフィレルリの演出も素晴らしい。
同じくボエームを得意にしていたカルロス・クライバーのボエームがビールで例えるならスーパー・ドライのような切れ味で一瞬にして酔い(毒?)が回るのに対し、セラフィンの演奏はさしずめ職人が丁寧に熟成させたモルツ。曲の旨みをじっくりと味あわせてくれる。薫りもコクもじっくりと堪能させてくれる。熟成された味わい。飲み終わった後にじんわりとした寂しさが漂う・・・
歌手についても穴が無く文句のつけようがない素晴らしさ。メフィストーフェレで悪魔のような太い声を聴かせた人と同じとは思えないシエピの控えた歌、病弱にしては少々立派だがミミの歌を堪能させてくれるティバルディ、永遠に歳をとらないかのような健康的でありながら美声と演技上手なベルゴンツィ(終幕の裏声混じりの「ミミ!」)、その他脇を支えると言っては失礼な位なダンジェロとバスティアニーニの痴話喧嘩。
神様のリハーサルの音が残っている。セラフィンの歌声が聴ける。
この盤の聴きどころはと聴かれても全部としか言いようがない。指揮者含めて誰も突出せず、最後に感じるのは「プッチーニのボエームってなんていい曲だろう」と感じさせてくれる高次元の記録です。録音も約70年の前となる1959年とは思えず、古さを感じさせないどころか、最新録音よりも活き活きとした録音でDECCAの録音の中でも傑出したもの。とはいえ昔の国内盤CDは少し古臭い音だなと、オリジナル盤LP(米LONDON盤ですが)を入手し楽しんでいました。輸入盤CDは特にリマスターに関しては何も謳ってありませんが、よいリマスターでLPを引っ張り出さずに済むようになりました。
これを超える録音はおそらく今後も現れることが無いと思います。期待されたクライバーは正規録音を残さなかったですし、残されたライブ録音も歌手に凸凹があります。三大テノール(ドミンゴ・カレーラス・パヴァロッティ)の世紀の共演よりも凄い組み合わせで、まさに20世紀中期の声の饗宴の記録です。レコード芸術、そして舞台芸術の粋を本当に教えてくれる名録音・名演奏です。

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こんな素晴らしい演奏が板起こしやリマスタリング再発売もされない。歴史に埋もれるのは何とも悲しい。フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ、カラヤンも良いですが、過去のしっかりお金のかかったオペラの名録音もしっかりとリマスタリングして配信だけでもしてほしいものです。
※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚
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