クラシック音楽レビュー

若きキーシンのプロコフィエフ ピアノ協奏曲録音 アバド/ベルリンpo盤

プロコフィエフやラフマニノフ、そしてバルトークのピアノ協奏曲を聴くと、「ピアノが達者に弾ける作曲家」としみじみ思います。特にプロコフィエフやバルトークはオーケストレーションも上手いので、ピアノの音がオーケストラの音に埋もれないように作曲されている。ピアノが屹立し過ぎず、オーケストラと上手く調和または対立します。

コンサートではラフマニノフばかりが人気。プロコフィエフのピアノ協奏曲はもっと演奏されても良いと思います。アルゲリッチは今でも第1番と第3番はレパートリーに入れています。ユジャ・ワンは2番も4番も録音しましたが、曲の出来が良くなくやはり面白くない。ラフマニノフも第4番は良くない。不思議なものです。指揮者を猛烈に煽った古典的名盤サンソン・フランソワに後ろ髪を引かれながら、ここは録音もよい正統派の若きキーシン盤を。今もお辞儀は相変わらずですが、本当に渋くかっこよくなりました。


プロコフィエフ ピアノ協奏曲第1番変ニ長調
        ピアノ協奏曲第3番ハ長調
ピアノ:エフゲニー・キーシン
指揮:クラウディオ・アバド
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1993年録音(3番のみライブ)

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非常にスタンダードで過不足ない名演のCDです。アルゲリッチのように楽譜に飛びかかるようなこともなく、冷静沈着でそして純粋に楽譜を音化させていて、音楽的なセンスが抜群。こう来るだろうと予想していても、その少し上の音を出してくるのがキーシンの特徴と言えるのかもしれません。このCDを聴くまでプロコフィエフの第1番はあまり知らない曲でしたが、好きなピアノ協奏曲の一つになりました。


第1番は同じ旋律を変奏させていくような形でフランクが好んだ循環形式的な曲です。少し当時としては前衛的な作風で無調的な部分もあります。演奏時間約15分で一応3楽章構成ですが、単一楽章的な楽曲に感じます。通常第2楽章は緩徐楽章的になることが多いのですが、旋律が発展してクライマックスを築くところはブルックナー的な要素も感じます。(第3番も同じ)ピアノのソロイスティックな効果と見事なオーケストレーションで短いながらぎゅっと凝縮された感じがします。

第3番はそれを少し拡張した感じ。こちらも演奏が25分程度と丁度いい。さらにプロコフィエフの成熟度が増し、郷愁的なフレーズとその効果を上げる楽器の選択が絶妙です。高度な技術が求められるピアノに耳が行きがちですが、実は木管楽器と打楽器の使い方が巧みに計算されていると思います。リズミックでありながら、懐かしい旋律とプロコフィエフ特有の金属的な不協和音が見事に融合している名作です。最近よく演奏される交響曲第5番よりも優れていると私は思います。

キーシンとアバドは両曲の特徴を見事に掴んだ演奏を繰り広げています。決してアクロバティックな面だけを強調することなく、ベルリンpoとピアノが一体となって壮大に演奏を繰り広げています。しかしアバドの合わせ物の上手さとベルリンpoの各セクションの巧さは本当に見事の一言。アバドとベルリンpoの残したCDの中でも上位に上げてもいい演奏です。ここではこのセクションがという場面で、想像を超える音を響かせます。不協和音ですら協和音に聴こえるようなアンサンブルの良さ。


キーシンのピアノは本当に不思議で強打しても不快な音にならない。常に折り目正しいというか、これ見よがしな部分が一切なく音楽的な音色を保ちます。その分アルゲリッチのような踏み外しが無いのが不満ですが、何度聴いても飽きない・耳に心地よい(プロコフィエフでさえも)というのはレコード芸術としては正しいと思います。いつもこのパターンなのに常識的な演奏かというとそうではないのが不思議。

良く聴くと要所ではぺダリングを上手く使っているのか、軽くエッジがついている。よく楽譜を読み込んで練られた上での模範的な演奏なのだなと教えてくれます。テクニックもしっかりしておりミスもなく、本当にセンスの塊。このCDの聴き所は、素朴に始まり徐々に盛り上がる第3番第2楽章。儚い音から暴力的なクライマックスへのビックバン、その後スッと表情を戻す両者の巧みさ。

録音も優秀でピアノとオーケストラのバランスが素晴らしい。少し分離が良すぎてマルチマイク的な録音でもありますが、プロコフィエフのこの両曲には合っている録音方式です。このCDは曲も録音方式もダイナミックレンジが広いため、オーディオ機器を変えるとすぐに聴きたくなるCDの一つです。特に第3番の第3楽章。木管と低弦をどのような音色をスピーカーが鳴らしてくれるか、そして音数が多いコーダの部分を如何にピアノとオーケストラを分解能高く聴かせてくれるか、かなり違いが鮮明に出ます。

もうこのCDが録音されて、そして巡り合って30年以上経つのかと妙な感慨一入。大学時代だったな。このCDに関しては浮気も買い直しもしていない。このCDはハイレゾ化されてほしいと1枚。今のキーシンはさらに進化していると思いますが・・・(3番はアシュケナージの伴奏で再録しています。2番とのカップリングだし、あまり伴奏に期待できないので未聴です)

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※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。 旧ページ:クラシック音楽 名曲・名盤CD求めて三千枚

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