クラシック音楽レビュー

カントロフとルヴィエによるフランク ヴァイオリン・ソナタ

今は指揮者としての活躍のほうが主のフランスの名ヴァイオリニスト ジャン=ジャック・カントロフ(1945-)。今のクラシックファンにカントロフといえば息子さんのアレクサンドル・カントロフの方を思い浮かべるのかもしれません。父カントロフのヴァイオリニストとしての録音は主に1970年代から1990年代前半までで、彼の全盛期の音はDENONの素晴らしい録音で残されています。個人的にフランス的な名デュオとしては、ティボーとコルトーのコンビの次にカントロフとルヴィエのコンビの名を挙げたいです。フランクはもちろんのこと、ドビュッシーやサン=サーンスからプーランクに至るまでフランス音楽を骨の髄まで楽しませてくれるデュオです。

ピアニストのジャック・ルヴィエはソリストとしての録音は少ない。なぜそんなに知られていないのだろうと思うほど素晴らしいピアニスト。ただの伴奏ピアニストでは終わらない。カントロフの自在な歌回しにピタリとつけるだけでなく、時にはカントロフをも喰ってしまうほどのエレガントかつ熱のある音色を紡ぎだします。このコンビのラヴェル「ツィガーヌ」(これは1970年初頭のエラート録音)の終曲部はライブ録音なの?と思うほどアッチェレランドをかけて終わるのですが、両者とも呼吸と熱量がぴったりで崩れない、しかも音が汚くならない。でもまずは一般的なフランクから入るのがよろしいかと。

フランク ヴァイオリン・ソナタイ長調
ラヴェル ヴァイオリン・ソナタ
ヴァイオリン:ジャン=ジャック・カントロフ
ピアノ:ジャック・ルヴィエ
1982年録音

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一般的には古くはティボー&コルトー盤、最近の録音ならデュメイとピリスによるグラモフォン録音が名演と名高い。デュメイ盤は昔はよく聴きました。歌いまわしがいいし、音がのびやか。ただこのカントロフ盤を聴いてからは、あまり取り出す機会は減った。なんというかピリスのピアノ共々「フランスの香り」がしない、ラテン系で明るいデュメイの音には酔わしてくれるが、無国籍な空気感がある。欲を言えば、はっきり過ぎるというべきか・・・ピリスのピアノも名伴奏だと思いますが、あくまで名伴奏止まり。


この映像凄い。ともに全盛期のクレーメルとアルゲリッチ。曲よりも二人の個性が勝ってしまう。

このカントロフ盤。特段「フランス音楽ですよ」とは言わないまでも、自然と香ってくる粋と陰影を伴った響きと表現が感じられる。柔らかく瑞々しく、少しだけくすんだ色合いを持つ音色。技巧も冴えているけど、テクニック的に凄い!と思わせない所がある。ものすごくピアニストと練られた表現と音色にも関わらず、それが自然に発露されて「これがエスプリというものかぁ」と感じさせてくれる。もちろんフランクの名旋律をしっかりと堪能させてくれる。洗練されてはいるけども鄙びた味わいがあり、どこか懐かしさも感じさせてくれる。

それを支えるジャック・ルヴィエの名伴奏。ヴァイオリンが無くても成立するのではないかと思うほど洗練されている。アルゲリッチのような爆演的ではないが、ピアニッシモから毅然としたフォルテまでダイナミック、でも音色の濃淡も巧みに使う。彼がドビュッシーの曲を得意とするところに通ずる。高音域は敢えて柔らかでのびやかなタッチを駆使しているようで、それがヴァイオリンの音色を邪魔しない。フランクの循環形式の構造を光の当て方で示すような知的なピアニズムを聴かせます。ヴァイオリン・ソナタにも関わらず、気づけばピアノの音色に耳が傾きがちになってしまう瞬間が多々ある。このデュオの録音だとこういう瞬間が結構あります。

録音も優秀。少しヴァイオリンよりもピアノ寄りかもと思う部分もあるが、ヴァイオリンが空間にふわりと浮かぶような立体感が魅力。それもあってか相互の音がぶつかり合う時のふわっとした空気感が感じられる。ラヴェルのソナタの第1楽章冒頭やフランクの第2楽章など特にその特徴が感じられるかと。この当時のDENONは本当にいい録音が多い。デジタル黎明期でもアナログ的な質感を取り入れて柔らかな音調にするのが本当に得意でした。

このデュオ、フランスの作曲家による名ソナタはあらかた録音を残しています。どれも外れが無い、またカントロフは、協奏曲録音でストラヴィンスキーとパガニーニが秀逸。またDENON時代の前のエラートで録音したラヴェルの室内楽作品集(2CD)は秀逸なCDです。こちらにツィガーヌが収録されています。


ピアノ三重奏曲やヴァイオリン・ソナタは再録音しましたが、ツィガーヌだけはしなかったので貴重。カントロフの技巧の冴え、音色の多彩さすべてが9分半に詰め込まれていいます。
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※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。
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