クラシック音楽レビュー

モノラルLPで味わうケンペとBPO+トルトゥリエの「ドン・キホーテ」

最近LPレコードをかける時間がすこし増えました。初期盤のLPも棚にあるため、モノラルLPをモノラルカートリッジで聴くという楽しみがあります。オリジナルテープの劣化を考えると、70年以上前のテープをいくら最新リマスタリングしたといっても、録音してすぐにレコードに刻まれた音には勝てないのです。

そんな中の1枚にルドルフ・ケンペとポール・トルトゥリエがベルリンpoをバックに録音したR・シュトラウスがあります。ステレオ録音されたようですが、私の家にあるのは英EMIのALP型番のモノラルLPです。これがなかなかのレコードです。LPでもCDでもステレオで聴こうと思えないほどにモノラル録音が優れている。当時はまだステレオ録音実験時代で、黎明期ステレオ録音と完熟期モノラル録音と2種類のレコードを使用していました。そのため例えば英DECCAのステレオSXL盤とモノラルLXT盤で音の傾向はかなり違いがあります。マスターが違うので当然です。この「ドン・キホーテ」は1958年録音。モノラルでも十分生々しい。

R・シュトラウス
交響詩「ドン・キホーテ」
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」
チェロ:ポール・トルトゥリエ
指揮:ルドルフ・ケンペ
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1958年
AMAZON → ケンペ トルトゥリエ「ドン・キホーテ」

ケンペ&トルトゥリエによる1958年ベルリン・フィル録音は、フルトヴェングラー時代の音が残る当時のBPOの骨太で実直な響きと、ケンペの誠実な造形美、そしてトルトゥリエの気品あるチェロの音色が融合した、20世紀録音史の中でも特別な名盤です。特に1950年代後半のベルリンpoの音は、カラヤン時代の洗練された光沢とは異なる、
・厚みのある中低音 ・重心の低い弦
・金管の強靭さ   ・木管の個性の際立ち
が特徴でした。これがモノラル録音だと際立ち、チェロ・コントラバスの音はごりっ・ズンとした感覚があります。この重量感は、後年ケンペがSKDと録音した滑らかで透明なR.シュトラウスとは対照的で、ベルリンpoならではの質実剛健なサウンドが「ドン・キホーテ」「ティル」のドラマ性を強烈に支えています。

ステレオでも凄いのかもしれない。

ケンペは、R.シュトラウスを楽譜に忠実に、誠実に再現する指揮者として知られています。1958年盤でも、大げさな表現を避けつつ細部を明晰にし、音楽の流れを自然に構造を見通しよく描き出しています。その堅牢なバックの中でトルトゥリエの独奏は、ノーブルで毅然と、しかも雄弁に演奏しています。音色の純度が高く、語り口が自然で好ましい。ロストロポーヴィチのように「俺が」と音量で勝負してこない。

この録音は1958年録音ながら、しかもEMI当時のEMIとしては優秀録音として名高く、各パートの質感と音離れの良さ、また近接気味で鮮明な収録でこの後のクリュイタンス、クレンペラーとは違うリアルな音像があります。楽器の生々しさが強く、音像が立体的です。

この録音の特徴である
・1958年のベルリンpoの骨太で個性的な響き
・ケンペの誠実で構築的なR.シュトラウス解釈
・トルトゥリエの気品と雄弁を兼ね備えたチェロ
・後年のドレスデン盤とは異なる、よりドラマティックで力強い世界
という要素で考えると、モノラルで再生した方が、マイクが捉えた音を最良の形でピックアップできていると思います。

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※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。
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