クラシック音楽レビュー

クナッパーツブッシュの「ばらの騎士」 ウィーン国立歌劇場 1955年

未だに名盤の誉れ高いエーリッヒ・クライバーが録音した「ばらの騎士」。その同時期にウィーン国立歌劇場再建記念の一環として行われたクナッパーツブッシュのライブ公演。R・シュトラウスのオペラで好きなのは、「ばらの騎士」「エレクトラ」「サロメ」+「カプリッチョ」の順です。カルロス・クライバーとこのCDがなければ「エレクトラ」が一番にきていたかもしれません。全くの創作物語ですが、ウィーンの香りたっぷりの音楽は本当に素晴らしい。しかし、いい演奏で聴かなければ他の3曲よりも聴き栄えがしません。


クナッパーツブッシュといえばワーグナー、ブルックナー。その次はブラームスとR・シュトラウスと言ってもよいのではないかと思います。ただ演奏する曲が限られている。ブラームスでいえば交響曲第2番・3番・4番とハイドン・バリエーション。但し2番・4番は晩年のレパートリーから外れる。R・シュトラウスは「ばらの騎士」「エレクトラ」、交響詩は「死と変容」「ドン・ファン」「アルプス交響曲」。これもレパートリーとして残ったのは「死と変容」のみ。「ばらの騎士」の録音は2種残してます。録音・演奏ともに素晴らしいのはこのライブ録音。

R・シュトラウス 歌劇「ばらの騎士」
ライニング、ベーメ、ユリナッチ、ポエル、ギューデン
指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ
ウィーン国立歌劇場管弦楽団及び合唱団
1955年 ライブ録音(モノラル)

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※入手しやすいのはRCA盤ですが、お勧めしません

両クライバーと対極にあるゆっくりゆっくり進むローゼンカヴァリエ。しかし当時のベストの歌手陣、再建記念ということで気合の入ったオーケストラの音が素晴らしい公演です。ちなみにベームの「フィデリオ」「ドン・ジョヴァンニ」、ライナーの「マイスタージンガー」など錚々たる面々が顔を揃えていた再建記念公演の中で一番評判を呼んだのは、この「ばらの騎士」だったそうです。幕前・幕後の拍手歓声を聴くとそれも納得。

オーケストラの演奏に関しては、ゆっくりが故ウィーン情緒をたっぷりと堪能させてくれます。両クライバーの演奏がロマン派掉尾を飾る豪華絢爛な音楽に精緻の限りを尽くした演奏とするならば、クナッパーツブッシュの演奏は19世紀末の雰囲気・遊びを残し、聴衆の娯楽、町劇場の演目の一つとしての愉しさに傾いた演奏。方向性が違うので比べるのは違うかと思います。結構ギリギリまでテンポを落とす場面でも、さすがはオペラ叩き上げの人で、歌手にしっかりと歌いやすいような配慮も忘れていない。クライバーのウィーンライブも言うほど速いテンポではないですよね。


このyoutubeはRCAの音質だと思います。

正直このCDに関しては、クナッパーツブッシュの解釈云々よりも、ウィーン・フィルの音色の甘さが名演奏に繋がっています。(当然引き出しているのはクナ)このテンポなのでウィーン訛り(拗ねたようなヴァイオリンの響き)がかなり強く漂ってきます。この響きはいくら晩年のクライバーでももう引き出せませんでした。ただ録音が優秀なので天上へ上っていくかのような美しさはクライバーに軍配が上がります。

歌手陣は少し歌い方に時代がかっている歌手もいます。どの歌手もゆったり目のテンポのため歌詞が明瞭で、また美しく歌い上げています。当時の定番メンバーなのでアンサンブルもしっかりしています。クルト・ベーメのオックス男爵は人間臭く、第2幕最後のワルツ後の「うふふふふ」といういやらしい笑い方も効果的。ウィーン中心に活躍した女性歌手ユリナッチ、ギューデンのオクタヴィアン、ゾフィーコンビも当時最盛期だった二人のベストフォームで美声。ライニングも他と比べなければ何の遜色もなく落ち着いた歌唱。



録音は声をマイクが良く捉えているのが嬉しい。最後の2重唱はオーケストラともども本当に美しい瞬間。時が止まったかのような錯覚を覚えます。各幕最後のブラヴォーは、今の演奏会のものと違って自然に口から出てきたような品のあるブラヴォーです。

ここでこのCDを取り上げたのは、意外と上記メモリーズ盤が評判にも挙がらないということ。この演奏はRCAから正規盤として発売され最近になって再リリースもされています。ただクラウス&アイヒンガーという迷リマスタリングコンビが、低音をばっさり切ってしまったためかなり酷評されました。高音はキンキンするし、確かに酷い。メリハリはいいものの、オリジナル音源をするめ化したようなものでまるで雰囲気が無い。


クナのエレクトラの一部。1940年代までは演奏した模様。

評判が未だにいいのは、1990年代に発売されていたゴールデン・メロドラム盤。篭った音でオリジナルのテープは別のようです。但し低音はしっかりと入っている。私には鮮度不足でいかにもエアチェック録音したテープから起こしたような音。それに比べるとメモリーズ盤はちょうどその中間の音で、当時のライブ録音としては出色な音質だと思います。

少し聴き比べ。第1幕冒頭、第2幕最後のワルツ、第3幕終幕部の3ポイントです。
■ゴールデンメロドラム盤
第1幕冒頭

第2幕最後のワルツ

第3幕終幕部

■メモリーズ盤
第1幕冒頭

第2幕最後のワルツ

第3幕終幕部

何かの参考にしていただければ幸いです。

※当ページはシーサーブログ「クラシック 名曲・名盤求めて三千枚」からの引っ越しページです。徐々にこちらに軸足を変えていく予定です。
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