絢爛華麗でエキゾチックな音の絵巻物、リムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」。是非録音のいい演奏で聴きたいもの。ただ私にとっては、1959年の若きレニーことバーンスタイン盤以外では聴くことがありません。そもそもリムスキー=コルサコフのオーケストレーションがいいので、ムソルグスキー(ラヴェル編曲)の「展覧会の絵」同様多少録音が悪くても迫力満点で堪能できる曲です。
バーンスタインが亡くなって随分経ちました。カラヤン同様に録音は多数多岐にわたる。晩年グラモフォンに遺したマーラーの交響曲再録音は未だ評価が高いもの。その他生前は評価の高かったウィーンpoとのモーツァルト・ベートーヴェン・ブラームス等は、徐々に忘れ去られつつあります。意外と生前評判を落としたCBS時代のニューヨーク録音の方が今聴くと面白く感じられるのが不思議です。後年の粘着質な部分が皆無で、肩で風切る感じで音楽に一直線の姿が好ましく感じられるのかもしれません。

リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェヘラザード」
ソロ・ヴァイオリン:ジョン・コリリアーノ
指揮;レナード・バーンスタイン
ニューヨーク・フィルハーモニック
1959年 セント・ジョージ・ホテル ボールルームでの録音
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リムスキー=コルサコフの鮮烈な管弦楽法に若きバーンスタインの勢いがそのまま上に乗っかったような演奏。そこに素直には言うことをきかない当時腕利き揃いのニューヨーク・フィルとのせめぎ合いが見事にバランスいい。まだ当時のニューヨーク・フィルにはワルターの音が残っていたと思います。
個性満点でさらに楽譜を触っているストコフスキー盤、録音でも愉しめるゲルギエフ盤など名盤ひしめくこの曲。ただ古い絵巻物に勇猛果敢にぶつかるバーンスタインの気迫、ワルターの影響が残ってシルキーな弦楽器の響きに溢れるオーケストラの響きを持つこの録音より、不思議と心が躍らされない。カラヤン盤のシュヴァルベのヴァイオリンも捨てがたいものの、如何せんバックが賑やかすぎる・・・。豪華絢爛+豪華絢爛ではちょっとくどい。
オーケストレーションが優れているものにさらに手を入れるストコフスキー。
初期のステレオ録音にも関わらず第1曲の冒頭部から金管楽器と低弦楽器の分厚いがどこか柔かい。その後に表れる名手コリリアーノの語り口が巧く色気も感じる独奏ヴァイオリンも素晴らしい。バーンスタインは少し控えてオーケストラに委ねる。少し遅めのテンポで存分に歌わせる。絵巻をゆっくりころころ転がして広げていく感じ・・・音楽は徐々に盛り上がっていきますが、そこはスタジオ録音、バーンスタインも少し冷静で丁度よろしい。
見事なオーケストレーションと魅力的な旋律の数々が絵巻から浮き上がるが如く浮き立つ。名手揃いの当時のニューヨーク・フィルの面々が余裕を持って演奏しています。録音は当時としては十分な位の好録音。奥行き感は少し足りない。ただ左右に良く音が分離し広がります。少しヒスノイズがあるものの、LPで聴いていた時に比べれば何の問題もない。
ニューヨーク・フィルと言えば当時金管楽器に名プレーヤー揃いで確かに巧く圧倒的な存在感がありますが、この演奏で特に素晴らしいと思うのは弦楽器群。第3楽章の冒頭の名旋律を綿毛に包まれるような柔らかな音を出すかと思えば、斬り込む所では切先鋭どい。コンサートマスターのコリリアーノの手腕とワルター時代の音の名残によるものだと思います。
セント・ジョージ・ホテルのボールルームでのこの録音は、ホール録音の広がりとは若干異なり、楽器の生々しい近接感が特徴。弦の粘り、金管の鋭い立ち上がり、打楽器の乾いた打音。これらがステレオ初期ならではの肉厚な音像で捉えられ、作品のドラマ性をさらに強調しています。当時のCBSの録音は、DECCAやEMIのような個性的な録音でないためあまり評価されないのは残念。
第4曲 バクダッドの祭りではバーンスタインがこらえきれず、力が入る。第1曲から聴いていると徐々に熱を帯びて、バーンスタインの気迫にオーケストラが引き摺り込まれている空気が感じ取れます。スタジオ録音でありながらライブ録音の様なスリリングさがこの盤の魅力の一つ。しかしスタジオ録音なので破綻寸前で留まっているバランスの良さ。
録音の古さは少し感じますが、古いお話のシェエラザードの物語を考えると、4K・8Kの高画質で語られてもなぁと。録音も演奏も少し大仰で人間臭く、古い絵巻物を紐解き広げていくようなこの演奏に魅かれ続けています。後年のバーンスタインで他のお薦めはベートーヴェンの「フィデリオ」のDVD。これは凄いです。
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