カルロス・クライバーのベートーヴェンといえばやはり交響曲第7番。ウィーンpoとのグラモフォン録音も評判が未だ高く、1986年来日時の人見記念講堂でのライブも未だに語り継がれる。第5番「運命」はクライバーのレパートリーから早々に落ち、結局第4番と第7番だけが最後までレパートリーに残りました。(結局振ったのは4番~7番のみ)
1982年のカール・ベーム追悼演奏会は前半第4番、後半台7番といういつもの演目。第4番に関してはLP時代に早々に発売され、こちらも同曲の代表的録音とされていました。この時の第7盤はクライバー死後の2005年になって突然陽の目を見ました。しかもSACDハイブリッド盤で発売されたことにも驚きでした。演奏もそれまでに知られていたものよりも燃え上っており、私はこれこそクライバーの真骨頂であると良く手に取るCDです。

ベートーヴェン 交響曲第7番
指揮:カルロス・クライバー
バイエルン国立管弦楽団
1982年5月のライブ録音
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この演奏は1982年5月3日、ミュンヘンの国立劇場で行われたライヴです。クライバーが敬愛していたカール・ベームの追悼演奏会で演奏されたもので、同日に録音された交響曲第4番と並ぶ貴重な記録です。しかし、クライバーの生前には発売されませんでした。彼は録音に極端なまでに慎重な人物で、自ら認めた録音は非常に少なく、この第7番も死後になってOrfeoからSACDハイブリッド盤として2005年末から2006年にかけてようやく正規発売されました。
第9に次いで家のCD棚に多いベートーヴェンのCDはこの曲。この曲はあまりスタジオ録音向きではない。しんねんむっつり演奏するとリズムが死んでしまうのか、あまり面白い録音がありません。カルロス・クライバーは20世紀後半を代表するカリスマ指揮者。その指揮姿を見ているだけで華がある指揮者でした。実際ハンサムですし、四角四面にテンポを刻むという指揮者のイメージが見事に崩れます。
クライバーのこの曲の正規録音は
1、ウィーン・フィルとのスタジオ録音
2、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団とのライブDVD
3,このバイエルン国立管弦楽団とのライブ録音
が正式に残されていますが、海賊盤でこのCDと同じバイエルン国立管弦楽団と来日した際のライブ録音、ウィーン・フィルとの定期演奏会でのライブ録音、最後の演奏会となったバイエルン国立管弦楽団のライブ録音等があり、一時はすべて家にありました・・・
ただ来日ライブを除いて音質はすこぶる悪い。
このミュンヘン・ライヴは危険な魅力を持っています。特に終楽章は圧巻。スタジオ盤では完璧に制御されたリズムと構築感が聴けますが、このライヴではそれがほとんど限界まで押し広げられています。そのためウィーン・フィルとの録音は世評が高いものの、このCDに比べれば生ぬるく感じる。特に第3楽章は来日公演共々スポーティー過ぎて音の厚みが物足りない点があった。コンセルトヘボウとのDVDは、指揮姿が最高にかっこいいですが、録音のフォーカスが甘く・・・。
この録音は初出当時から、「ミスが多い」「オケが下手」という声と「これぞクライバーのライブ」と称賛する声の二手に意見が分かれていましたが、私は後者です。すべてのクライバーの同曲異演を聞いていますが、録音と演奏のバランス、オーケストラの鳴りっぷりはこの演奏が一番です。当日後半の曲ということもあり、第1楽章からオーケストラ全体が崖っぷちを全速力で駆け抜けているようなスリルがあります。テンポは猛烈、リズムは異常なほど弾む、クレッシェンドは爆発的でオーケストラはクライバーに必死に食らいつくという状態が最後まで続きます。SACD層で聞くと、かなりオンで生々しく録音されており、この鳴りにくい曲の弱点を補完してくれていると思います。
Orfeo盤は1982年の放送用マスターをもとにリマスターされたもの。音の特徴は、客席のやや前方で聴いているような近接感があり、弦のアタックが非常に生々しい。木管も目の前で鳴るような存在感があり、ホールの残響より直接音を重視した方向性の音。そのためミスもかなり目立つのは事実。ただオーケストラの真ん中に放り込まれたような生々しさがあります。
ただ早いだけの演奏ではなく、要所要所でしっかり手綱を締め、楽器のバランスを変えたりとしっかりと考えられたうえで、パッションで味付けされている。クライバーはリハーサルが厳しい・細かいこと、そして異常なほど神経質で有名でしたが、実演ではそのパッションで演奏します。しかしパッション成分が強くなるあまり、テンポが速いだけの演奏になってしまうこともあります。
この録音の価値を一言で表すなら、ベートーヴェンの第7番が持つ陶酔と危険性を、クライバーが限界まで引き出した記録だと思います。
正規録音のウィーン・フィル盤が「永遠の完成形」だとすれば、このバイエルン国立管とのライヴは「その完成形が、観客の前で火を噴いた瞬間」の記録。クライバーを初めて聴くならDG盤、第7番の真の中毒性まで味わいたいならこのOrfeo盤がお薦め。
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