モーツァルトの後期協奏曲の中でも、第22番は特別な位置を占める。第20番の劇性、第21番の優美さ、第23番の抒情性は広く知られているが、第22番にはそれらすべてを包み込むような豊かさがある。特に第1楽章では、シンフォニックなスケール、管楽器の華麗な活躍、王侯貴族的な気品が見事に融合している。
指揮者としてのバレンボイムは全く評価していないのですが、この演奏だけは別格。ヨーロッパ室内管弦楽団との録音も優れています。ただバレンボイム以外でこの曲を聴こうとは思えなくなったのはこのヨーロッパコンサートでの演奏です。NHK-BSで見て圧倒されDVDが出るのを心待ちにしていた演奏です。
ベルリン・フィルとの『K.482』:何がこれほど特別なのか?
このバレンボイムとベルリン・フィル(BPO)による演奏は、現代のオーケストラによるモーツァルト演奏の最高峰の一つといえます。 室内オーケストラ的なピリオド(古楽)アプローチが主流となった現代において、彼らが聴かせるのは重厚かつ極めて豊潤なシンフォニック・モーツァルトです。
モーツァルト ピアノ協奏曲第22番 変ホ長調 K.482
ピアノ・指揮:ダニエル・バレンボイム
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
演奏会:ヨーロッパ・コンサート2006
2006年5月1日 エステート劇場(プラハ)
AMAZON → ベルリンフィル ヨーロッパコンサート2006
〇オーケストラのスケール感と色彩感
クラリネットを本格的に取り入れたK.482の管楽器パートを、BPOの精鋭たちが豊かに鳴らし切ります。
〇「弾き振り」による一体感
バレンボイムが鍵盤に向かいながらオーケストラと交わす視線、呼吸の合わせ方がそのまま音楽の情熱へと昇華されています。
圧巻の第3楽章:ダイナミックさとドラマチックなコントラスト
この録音の最大の聴き所は、間違いなく第3楽章(Rondo: Allegro)です。通常、モーツァルトのロンド楽章といえば軽快で愛らしい印象を受けますが、バレンボイムとBPOの手にかかると、そこには劇的な大パノラマが広がります。
① アタックの力強さと推進力
アレグロのメインテーマが提示される瞬間から、バレンボイムのピアノは強靭な打鍵と冴え渡るリズム ピアノは強靭な打鍵と冴え渡るリズム感で楽曲をぐいぐいと引っ張っていきます。それに答えるBPOの合奏も、フォルテでの爆発力が圧倒的。単なる「綺麗で繊細なモーツァルト」の枠を完全に踏み越えた、劇的なダイナミズムに息をのまれます。
② 中間部「アンダンティーノ・カンタービレ」との強烈な対比
第3楽章の途中で突如として現れる、3分の2拍子の緩やかな中間部。ここでの表現の深さも特筆ものです。直前までの躍動感溢れるダイナミズムから一転し、木管楽器の哀愁漂う響きとバレンボイムの歌心に満ちたピアノが溶け合います。この「劇的な動」から「深い静」へのコントラストがあるからこそ、再びメインテーマに戻った際のダイナミズムがより一層際立立つのです。
◎ バレンボイムの「同曲録音」と比較
バレンボイムは『ピアノ協奏曲第22番』をキャリアの中で複数回録音・収録しています。これらを比較すると、彼の音楽性の進化がより明確に浮かび上がります。ベルリンフィルとは別にセッション映像、またCDでも録音していますがこの二つの演奏には及ばない出来。
| 録音 / 年 | 共演オーケストラ | 特徴と魅力 |
|---|---|---|
| 旧録音(1970年代) | イギリス室内管弦楽団(ECO) | フレッシュで若々しい勢い 小編成ならではの機敏さと、若きバレンボイムの感性がストレートに出た俊敏な演奏。 |
| ベルリン・フィル (ヨーロッパコンサート) |
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 | 重厚でスケールの大きい劇性 オーケストラの圧倒的な表現力を縦横無尽に駆使し、第3楽章などで類を見ないダイナミックな世界観を構築。 |
モーツァルトが残した数多のピアノ協奏曲の中でも、華やかさと深みが同居する『ピアノ協奏曲第22番 変ホ長調 K.482』。この楽曲の真価を極限まで引き出した演奏として絶対に外せないのが、ダニエル・バレンボイム指揮・ピアノによるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との演奏(ヨーロッパコンサート)です。
ECO(イギリス室内管弦楽団)との旧録音では、瑞々しく軽快なアンサンブルが魅力でした。しかし、後年のベルリン・フィルとの録音では、交響曲並みのスケール感と熟達したテンポの緩急が加わり、モーツァルトの音楽に眠る「オペラ的・劇的なエネルギー」が最大限に開放されています。
ダニエル・バレンボイムとベルリン・フィルによるモーツァルトのピアノ協奏曲第22番は、室内楽的な洗練とシンフォニックな力強さが見事に融合した、唯一無二の名演です。特に第3楽章で聴くことのできるダイナミックなうねりとドラマチックな展開は、聴くたびに新しい感動を与えてくれます。単に整ったモーツァルトではなく、「血の通った、熱量のあるモーツァルト」を体験したい方に、心からおすすめしたい一枚(一映像)です。
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